メールマガジン/ブログ - 最新情報
2024年04月13日

「福井出張報告」

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       今の美術業界を考える(その1026)

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福井出張報告             2024年4月13日
               
先日、お誘いを受けまして福井の敦賀まで北陸新幹線で行ってまい
りました。新しい新幹線は快適で、開通したときにはニュースで
大々的に報道されており、TVで拝見しておりましたので親しみを
もっていってまいりました。

2年前より、福井県と軽井沢町は連携協定を結ばれており、
軽井沢で頻繁に福井のイベントをされておりました。互いに中山道
の宿場町として栄え、明治以降は軽井沢は外国人に人気の別荘地と
して栄えました。その中で、日本人として初めて軽井沢に別荘を
建てられたのが福井県出身の八田裕次郎さんということで、今では
軽井沢町の文化財として保存されています。

今回、敦賀ではショパンで有名な横山幸雄さんのピアノコンサート
に参加してまいりました。横山さんのショパンにまつわる話は、
非常に興味深く、敦賀が歴史的にロシア革命のときの難民や、
命のビザで有名な杉原千畝さんの発行されたビザで日本に入国さ
れたユダヤ人は敦賀港から日本に入られたそうです。そのユダヤ人
の中には当然、ポーランド出身の方も多く含まれています。
ショパンはポーランド出身の作曲家で人生の多くをフランスで無国籍
で過ごされたという事です。

横山さんの演奏は昔から聞いておりましたが、美術と同じで、作曲
の解説をお伺いしながら、そして敦賀との関係性を聞きながらの
演奏は普段よりも何倍も価値があり、敦賀で聞く横山さんの演奏会
という体験に感動してまいりました。
個人的に、ショパンの英雄ポロネーズは横山さんのピアノが一番だと
思っています。ご本人にその旨をお伝えすると、とても喜んで下さい
ました。

その後、敦賀から場所を変えて福井の開花亭でお世話になりました。
諦めていた桜も目の前で美しく咲き誇っており、素晴らしいお料理を
いただきました。これらの会合を商工会議所や、県庁の方々が
企画されたと伺い、驚きました。福井は改めて、北陸の文化
都市であり、役所の方々の文化度の高さに感激してまいりました。

地元の方々は、当たり前のことなので外から見た福井の良さが実感
できていないのだと彼らとの会話の中から感じました。北陸新幹線も
開通して、これからは外国人旅行者が福井の魅力を伝えるようになる
のだと思います。私もご協力できることがあれば、福井に貢献したい
と思う旅になりました。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
 

2024年04月06日

「DIC川村記念美術館」

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       今の美術業界を考える(その1025)

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DIC川村記念美術館           2024年4月6日
               
先日、軽井沢の仲間とDIC川村記念美術館に行ってまいりました。
というより軽井沢の仲間に、川村記念美術館のオーナー夫妻が
いらっしゃいますので、皆さんでお邪魔したというのが正確な
表現だと思います。

こちらの美術館はレンブラントからピカソ、シャガール、マチス
などの作品からアメリカ現代美術まで幅広く収集されており、
特に7点の作品からなるマークロスコの部屋は圧巻です。

たまたま今年のお正月にパリに行ったときに、ルイ・ヴィトン財団
美術館でマークロスコの展覧会が開催しており、それを拝見した
後だったので、その感動もひとしおでした。

日本の美術館で、マークロスコの名品をまとめて持っていらっしゃ
るのは川村記念美術館だけでしょう。軽井沢のセゾン美術館にも
マークロスコの名品が1点ありますが、7点まとめて拝見するの
とは見え方が違ってまいります。

今回は美術館の入り口近くにあるレストランでもお食事を頂き、
川村夫妻の絵画にご興味のあるご友人方20名くらいでの鑑賞会
となりました。

今は6月30日までカール・アンドレ〜彫刻と詩、その間 という
アメリカ現代アーティストの企画展も実施されており、そちらも
学芸員の方にご説明いただき拝見させていただきました。
こちらの作家はミニマル・アートを代表するアーティストの一人で
あり、今年の1月24日に88歳でお亡くなりになられています。

なんとも哲学的な作品で、これから益々評価されていく作家なのだ
と思いました。日本の美術館では初めての個展となる今回の川村記
念美術館での個展です。作品の鑑賞にあたっては、作品の上を歩い
てもよい美術品などもあり、どきどきしながら作品の上を歩きました。

川村記念美術館は、なんどかお伺いしたことがありますが、今回のように
友人たちと一緒に伺うのも、楽しいものだと思いました。

次回はゴルフの帰りにでも、友人と一緒に伺ってみようかと思っています。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月30日

「島村信之展」

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       今の美術業界を考える(その1024)

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島村信之展              2024年3月30日
               4月6日まで at Gallery Suchi

島村信之先生の個展がGallery Suchiで4月6日まで開催されて
います。残念ながら初日には伺えませんでしたが、期間中にお伺い
させていただきました。

こちらの画廊は茅場町2-17-13 第二井上ビル2Fにあり、日曜と
月曜日が休廊となっています。画廊の創業者の須知さんは、お若
いなか、非常に頑張っておられましたが残念ながら病気を患い
お亡くなりになられました。

詳しいことは、あまり存じ上げませんが彼の仕事ぶりは拝見させて
頂いております。銀座柳画廊でもご縁のあるホキ美術館には多くの
作家をご紹介されており、写実作家を中心に仕事をされておりまし
た。現在は、取り扱い作家たちとともに奥様が頑張っておられると
伺っています。

画廊の仕事は息の長い仕事で、作家を育てるといっても10年単位
で、すぐに結果がでるものではありません。しかも、絵が売れると
いうのは、作品が良いことも長い目で見たら非常に重要ですが、景気
というものにも大きく影響を受けてしまいます。

ですから、絵描きと一緒に仕事をしている画廊の心構えとしては、
個展で作品が売れることに一喜一憂するのではなく、やはり10年
単位で、扱っている作家が成長していくことを伴奏する覚悟がある
かどうかを自問自答しながら継続することになります。

もちろん、銀座柳画廊でもご紹介を受けた作家で1〜2回展覧会を
開催して、お付き合いがなくなった方もいらっしゃいます。その原因
は、作品や展覧会に向き合う姿勢が、銀座柳画廊と折り合わなかった
からだと思っています。

島村信之先生は銀座柳画廊が創業する前からのお付き合いであり、今
も引き続き応援しています。今回のGallery Suchiさんとの個展も、生前
から島村先生がお約束をされていて、亡くなられてからでもお約束を
果たそうとされるお人柄に、改めて島村信之先生の誠実な仕事ぶりに
敬意と尊敬の念を持っています。

多くの方にGallery Suchiさんの島村信之展に足を運んで頂きたいと、
思っています。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月23日

「アートコレクター入門」

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       今の美術業界を考える(その1023)

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アートコレクター入門         2024年3月23日
                田中千秋 著     平凡社

先日同業者の秋華洞の田中千秋社長が初めて本を出版され著書を
ご本人がお持ちになってくださいました。早速、拝読させて頂き
ました。田中社長は思文閣の3代目であり、お父様が思文閣の
東京代表を長く勤めておられましたが、甥の田中大さんが、
京都で社長になられるときに、思文閣をお辞めになり、千秋さんと
一緒に親子で秋華洞を創業されています。

個人的には、田中千秋社長がIT業界におられてから、この美術業界
に入られました。私とおなじような時期に業界に入られておられる
ので親近感を持っています。田中さんのお父様は、私が画廊巡り
を始めた時、周りの同業者からは冷たい目で見られていたのに、
ツアーで伺うと温かく迎えてくれたのを昨日のように覚えています。

さて、その田中社長が長年、本を出版するにあたりなかなか出版社が
決まらないと悩んでいらっしゃっていたので、私が本を出版したときに
力になってくれた編集者をご紹介させていただき、素敵な内容な本を
出されたと感激しています。

名前のとおり、‘アートコレクター入門’ということで、この本の
目的は、何人かの登場人物と、田中社長とでコレクター入門の塾の
講義を聞くという仕立てになっています。SNSでは過激な発言の多い
田中社長ですが、この本の中では非常にバランスのとれた、優しい
おじさん風の会話で、読みやすい内容になっています。

私が画廊巡りを始めた思いと同じであると、この本を拝読して感じま
した。美術業界で、新しいお客様を増やしていくためには、業界を
あげて取り組まなければならない課題であるにも関わらず、個々の
画廊の努力だけではどうにもならない状況に追い込まれているという
のが共通認識です。

日本の文化の素晴らしさを身近に感じているのが、日本の美術関係者
です。その仲間である私達が、つまらない嫉妬や焼きもちで外部のお客
様への対応が、お客様の望む方向性になっていないのが現実です。
これからは、田中社長をはじめとして 多くの同業者の仲間が日本の
文化の営業マンとして、商売だけでなく多方面で協力しあう時代なのだと
思っています。

今後の田中社長の活躍も楽しみにしています。多くの方に、この本を手に
取っていただき、ご一読いただくことをお勧めします。日本美術の奥深さ
を垣間見ることができることをお約束いたします。


                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月16日

「春の名品展2024」

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       今の美術業界を考える(その1022)

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春の名品展2024          2024年3月16日
           銀座柳画廊にて 2024年4月5日にて

明日の3月17日から4月5日まで銀座柳画廊にて春の名品展を
開催いたします。3月17日の日経新聞の朝刊に広告を掲載いたし
ますので、日経新聞をお取りの方はご覧いただけると嬉しいです。

今回はルノワールのブロンズやユトリロの油彩など、見ごたえの
ある作品をご用意しておりますので是非、お越しいただけると嬉し
いです。

今年に入りまして、日本の株価が上昇しており先日は日経平均が
4万円を突破いたしました。バブル時代に社会人になった私として
は、前のバブルを思い出すのですが、今回は外国人を中心とした
株価の上昇で、以前のような熱狂をあまり感じません。

それでも銀座にいると、ものの値段はどんどんと高くなるし、円安
もあって外国人の方の購買意欲には驚かされます。美術品もその
勢いで高くなっているかというと、明暗がはっきりしており、高く
なっていくものと変わらないものとで分かれているように感じます。

ある意味で、日本人の文化度も成熟してきているのを感じています。
資産としての絵画の保有は昔も今も、富裕層の方から人気ですが、
以前のように、にわか株で稼いだ人が絵画を購入するかといえば、
そうでもないように思います。

今週末は有楽町国際フォーラムにおいてアートフェア東京も開催して
おります。こちらのほうも、拝見してまいりましたが、こちらは
落ち着いて拝見することが出来ました。

銀座柳画廊として、以前はアートフェア東京にも参加しておりましたが
最近は社長の判断で出展は見送っています。私としては、広告宣伝と
しては意味があると思っておりますが、アートフェア東京のお客様が
直ぐ近くなのに画廊にこられることは殆どなく、アートフェアに来られ
るお客様は、翌年のアートフェアでお会いするという感じです。

銀座柳画廊としては、地道に画廊にくるお客様を増やそうと思っています。
銀座の画廊巡りもその一環です。そういう意味において、広告をだして画廊
に人をお呼びするのが、とても地味ではありますが、銀座柳画廊のお客様を
増やすためには最も効果的な方法なのだと思っています。

分かり易い作品をお手頃なお値段から取り揃えておりますので、銀座にお越
しの際はお立ちより頂けましたら幸いです。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月09日

「マティス〜自由なフォルム」

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       今の美術業界を考える(その1021)

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マティス                2024年3月9日
〜 自由なフォルム
      国立新美術館 5月27日(月)まで

国立新美術館で開催しているマティス展に行ってまいりました。
多くの方が既に行っていらしており、こういう人気の展覧会は会期
の後半になると、なかなか入れなくなってしまうので早くいかな
ければと思っておりました。

今回の展覧会はフランスのニース市のマティス美術館の所蔵作品を
中心に、切り絵に焦点を当てながら焼く150点を紹介するものと
なっておりました。

特に、今回、見ごたえがあったのは、マティスが最晩年に建設に
取り組んだ、ヴァンスのロザリオ礼拝堂に着目し、建築から室内
装飾、祭服に至るまでマティスの芸術世界を紹介するものとなって
おります。会場内に、そのロザリオ礼拝堂の写しを作り、あたかも
現地にいるような気持ちにさせてもらいました。

会場では、現場の教会の鐘の音やミサの音楽なども静かに流れて
おり、臨場感あふれる展示となっておりました。

私が美術商になって30年の間に日本の美術館の企画力や交渉力は
大きく変化したと実感しています。30年まえは、日本はアジアの
辺境の地であり、お金はあったとしても内容の良いものは欧米の
美術館から貸し出されることは、なかなか難しかったのだと思います。

しかし、現代になり経済的には厳しくなった日本に対し内容の充実
した美術品が来るようになり、日本にいながらにしてレベルの高い
作品を拝見できるようになっています。

それというのも、日本の学芸員の方々の努力と、そのレベルの高い
交渉力と企画力によって、現地の学芸員の方も日本の文化度の高さ
を認めてくれるようになったのだと思っています。
1980年代はまだまだ日本はエコノミックアニマルと言われて
おりました。経済的には世界の中で沈み始めていると言われており
ますが、日本の文化度の高さは、かつての経済大国だった日本と比
べて、さらに評価は高まり、文化大国として世界に発信していく時期
がやっときはじめているのだと感じています。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月02日

「福永明子展2024〜ひのもと〜」

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       今の美術業界を考える(その1020)

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福永明子展2024            2024年3月2日
〜 ひのもと 〜
        銀座柳画廊 2024年3月10日まで
                     
銀座柳画廊で4回目となる福永明子展を開催しています。サブ
タイトルは 〜ひのもと〜 。福永先生はスピリチュアル系の方で
すので、人やネットなどから情報を取るというよりも、自分の感性
で感じることをとても重視されています。

純粋に日本に生まれて、育ててくれた日本の事が大好きだとおっ
しゃる福永先生にとって、今回、初めて描かれた富士山は、今まで
畏れ多くて描けないと思っていたのを、今回の展覧会では「描かな
ければ」と思ったようです。

作家にとって、個展というものは何年かに一度、自分の成長を含め
て、日々の精進と考えていることを発表する場所でもあります。
それは孤独な作業でありますが、多くの方に見ていただくことで、
その孤独の作業の結果を感じる機会となります。

前回の展覧会はコロナ過で開催され、それから世界はロシアの戦争、
中国の覇権の脅威、そしてパレスチナとイスラエルの戦争など、
私達の周りでは心が不安定になる要素でいっぱいです。

今回〜ひのもと〜というサブタイトルをつけ、富士山を描こうと思っ
た福永先生の気持ちはそれらの一連の当然の流れであったのだと感じて
います。今、世界で求められるのは、‘和をもって尊しとする’日本
の精神性であると福永先生は感じておられ、私もそれに共感しています。

その思いを日本画という形で表現され、今回の展覧会にぶつけてきて
くれたことに、銀座柳画廊としては応えていきたいと思っています。
私も最近、海外に出ることが多くなってきている中で、感じることは
海外にいると緊張しているという事です。言葉の問題ももちろん、あ
りますが、人に騙されないか、すりにあわないか、危険な目に合わない
か、などなどそこには危険が一杯だからです。
日本にいるときに感じる、安心感と食事のおいしさ、人の優しさは
お金では表現できないものであり、その価値に気づいた外国人が
円安で安いからだけではなく、日本のファンになっているのだと
思っています。

今回の展覧会は福永先生の今の心境が伝わるものとなっています。一人
でも多くの方にご高覧いただきたく、宜しくお願いいたします。



                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2024年02月24日

「Seed 山種美術館 日本画アワード2024」

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       今の美術業界を考える(その1019)

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Seed 山種美術館 日本画アワード2024  2024年2月24日
   山種美術館  2024年3月3日まで
                     
山種美術館で開催している日本画アワードを拝見してまいりました。
この公募展は日本画の奨励・普及活動の一環として、1971年
より開催されているということです。

山種美術館の館長が、大学の先輩というご縁もあり直接お声かけを
頂きましたので、直ぐに行ってまいりました。関連イベントとして
アーティストトークもあるということで、午後2時からのご案内を
頂きました。残念ながらその時間帯は伺うことができなかったの
ですが、幸いその前の11時から開催されているアーティストトー
クに途中から参加することができました。

普段、画廊を経営しておりますから絵を見ることは慣れております。
それでも作家の思いを直接伺うことはとても大切です。山田雅哉さん
という作家さんがとても素晴らしいことをおっしゃっておりましたので
ご紹介いたします。
‘僕は日本画の可能性を信じています。日本人として生まれ、日本画
は日本の精神性を表すものとして最適な表現方法だと思っています。
日本画を描くときは顔料と膠と紙と筆で描いています。その時に僕は
日本画は全て自然界にあるもので絵を描いているという事を意識して
います。すべてのものに神様がいるという考え方は日本画の世界の中
に今でも生きていると思っています。‘

確か、こんな感じのトークをたんたんとまだお若いのにお話されていた
のがとても印象的でした。

銀座柳画廊は油絵の作家を中心に扱っている画廊ですが、今の時代は
油絵とか、日本画とか、インスタレーションとか、ミックスドメディア
やメディアアートなど、さまざまな表現方法があり、大切なことは、
その絵画に込められた精神性だと私は思っています。

海外からのお客様が増えた銀座では日本画に興味を持たれる方が多く
いらっしゃることを肌で感じています。また、日本画の作家は日本にいな
がらにして、日本人であることを意識されている方が多くいらっしゃいます。

改めて私自身も、山種美術館とのご縁を頂いたことから、日本画についても
展覧会をはじめとして知識と経験を深めようと思いました。山種美術館での
公募展では、非常に高いレベルの作品が並んでおり、ここから将来の巨匠が
生まれてくるのだと思うと、画商としてはまた3年後、この展覧会には来な
ければいけないと思いました。

美術ファンには、これからの作家を見つける登竜門になると思います。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年02月17日

「ドガの想い出」

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       今の美術業界を考える(その1018)

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ドガの想い出             2024年2月17日
  J.フェブル、A.ヴォラール著  東珠樹 訳  美術公論社
                     
昭和59年に出版されたこの本を、倉庫から引っ張り出して拝読
いたしました。この本は画家ドガの姪であるJ.フェブルと画商の
ヴォラールがそれぞれに書き下ろしたものを、訳者の東珠樹氏が
翻訳して1冊にまとめたものです。

ドガの人となりを直接、そばで支えた2人による記録はより深く
ドガの作品だけでなく、その人やその作品が出来上がる背景を
理解するのに重要なものでありました。とくにJ.フェブルは
独身のドガの晩年の健康を管理するという重要なお役目を果たされ
ており、もともと貴族出身であるドガの良い理解者だったのだと
思います。ドガは、ド・ガス家のフランス貴族の出身であり、
ドガの祖父の時代にフランス革命があり、激動の時代を生き抜いた
ようです。

ともあれ、祖父の代の働きにより、経済的には恵まれたドガは、
それでも画家という仕事を父親に理解してもらうまでは経済的な
苦労も経験し、その時に眼を痛めていると回想されています。
この書物から、私はしったのですがドガは眼が悪く、晩年の10
 年ほどは、ほとんど眼が見えていなかったようです。

 眼が殆ど見えないということから、手で形を作るということで彫刻
 という仕事にも力をいれています。オルセー美術館にも多く収蔵
 されているドガの踊り子たちのブロンズは、そういった背景から制作
 されたものだと知りました。

 また、ヴォラールの書いたドガに関する回想録には、画商として
 ドガの生活を支えていたエピソードなどが多く書かれておりました。
 まず、ドガが結婚しないという選択を選んだことにも、ヴォラール
 の考察によると、ドガの芸術家に対する考え方が、芸術家という
 ものは、束縛も、習慣も、義務も持つものではなく、ただ、常に魂の
 安らぎだけを持つものである、と考える人だからとのことです。

 ともあれ、二人のドガに関する文章を拝読しても、やはりドガは
 一般的には人づきあいは苦手なほうで、一人でいることを好み、
芸術が最も大切な友人であったことは事実のようです。

 当時のゴッホもそうですが、私達日本人が抱いている芸術家のイメージ
 の代表格のような方がドガという人物であり、彼が生み出した芸術が、
 多くの芸術家に影響を与え続けていることは確かなのだと思います。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2024年02月10日

「印象派」

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       今の美術業界を考える(その1017)

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印象派                2024年2月10日
                東京都美術館 4月7日まで
       
 ボストンのウスター美術館の所蔵作品が中心の‘印象派’の展覧会
 を上野の東京都美術館で拝見してまいりました。このブログでは
 美術展のことを書くのが喜ばれるようですので、平日の朝の仕事
 時間中ですが社長にもお許しを頂いて、拝見してまいりました。
 書くことが多くあるときはダブるために、昨年、SOMPO Museumで
 拝観したゴッホ展などはコラムにしておりませんが、会期が終わっ
てしまっているので、書くのをためらっています。

 話がそれました。今回の印象派という内容の展覧会ですが、内容
 としては、アメリカのボストンにある美術館からの貸し出しです
 ので、フランスで起こった印象派という活動がどのようにして、
 アメリカに伝搬したのか、その時代背景も含めて紹介する内容と
 なっておりました。

 私の考察では美術の歴史というのは、ある意味では権力者の歴史で
 あって、美術史というもの自体が世界の権力構造を知る上で大きな
 意味があると思っています。そういう意味で、印象派という時代は
 世界の権力がヨーロッパからアメリカに移る時の芸術という作品
 を通して、歴史的な権力の移動を確認するものだと感じました。

 当時のアメリカ人にとって旅行というものはヨーロッパにいくこと
 だったそうです。パリのデュラン・リュエル画廊が印象派を
 新興国のアメリカに紹介することで、富を得るとニューヨークにも
 その支店をだし、アメリカにヨーロッパ文化を高い価格で普及させて
 いったのだと理解しています。

 そうした中で、世界中の芸術家をエコール・ド・パリという時代に
 パリに集めて、勉強したのちに自国に戻り一人者になるということ
 が行われました。今でもフランスは文化の力を国力と位置付けて
 いる国だと思います。その大きな力の源泉が印象派という芸術活動
 だったことは明らかなのだと感じました。
 今回の印象派の展覧会では、メアリーカサットなどを含む多くのアメ
リカ人の印象派の作品も展示される中に、ウスター美術館の所蔵のもの
ではありませんでしたが、印象派に影響を受けた日本人の作家も併せて
紹介されておりました。

少し気になったのは、全体として会場に対して集めた作品の数が少ない
のかな??? と思いましたが、この展覧会から学ぶことは多く、
経済的に成功された方が地域への社会貢献として美術館を作る流れは
アメリカで盛んにおこなわれている活動で、日本にもその影響を受けた
経済人が出てきていることも喜ばしいことだと思いながら、この展覧会
を拝観させていただきました。

銀座柳画廊にこの展覧会カタログも置いてありますので、ご興味のある
方はカタログを拝見しに画廊にこられるのも歓迎しています。


                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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