メールマガジン/ブログ - 最新情報
2024年03月16日

「春の名品展2024」

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       今の美術業界を考える(その1022)

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春の名品展2024          2024年3月16日
           銀座柳画廊にて 2024年4月5日にて

明日の3月17日から4月5日まで銀座柳画廊にて春の名品展を
開催いたします。3月17日の日経新聞の朝刊に広告を掲載いたし
ますので、日経新聞をお取りの方はご覧いただけると嬉しいです。

今回はルノワールのブロンズやユトリロの油彩など、見ごたえの
ある作品をご用意しておりますので是非、お越しいただけると嬉し
いです。

今年に入りまして、日本の株価が上昇しており先日は日経平均が
4万円を突破いたしました。バブル時代に社会人になった私として
は、前のバブルを思い出すのですが、今回は外国人を中心とした
株価の上昇で、以前のような熱狂をあまり感じません。

それでも銀座にいると、ものの値段はどんどんと高くなるし、円安
もあって外国人の方の購買意欲には驚かされます。美術品もその
勢いで高くなっているかというと、明暗がはっきりしており、高く
なっていくものと変わらないものとで分かれているように感じます。

ある意味で、日本人の文化度も成熟してきているのを感じています。
資産としての絵画の保有は昔も今も、富裕層の方から人気ですが、
以前のように、にわか株で稼いだ人が絵画を購入するかといえば、
そうでもないように思います。

今週末は有楽町国際フォーラムにおいてアートフェア東京も開催して
おります。こちらのほうも、拝見してまいりましたが、こちらは
落ち着いて拝見することが出来ました。

銀座柳画廊として、以前はアートフェア東京にも参加しておりましたが
最近は社長の判断で出展は見送っています。私としては、広告宣伝と
しては意味があると思っておりますが、アートフェア東京のお客様が
直ぐ近くなのに画廊にこられることは殆どなく、アートフェアに来られ
るお客様は、翌年のアートフェアでお会いするという感じです。

銀座柳画廊としては、地道に画廊にくるお客様を増やそうと思っています。
銀座の画廊巡りもその一環です。そういう意味において、広告をだして画廊
に人をお呼びするのが、とても地味ではありますが、銀座柳画廊のお客様を
増やすためには最も効果的な方法なのだと思っています。

分かり易い作品をお手頃なお値段から取り揃えておりますので、銀座にお越
しの際はお立ちより頂けましたら幸いです。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
 



2024年03月09日

「マティス〜自由なフォルム」

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       今の美術業界を考える(その1021)

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マティス                2024年3月9日
〜 自由なフォルム
      国立新美術館 5月27日(月)まで

国立新美術館で開催しているマティス展に行ってまいりました。
多くの方が既に行っていらしており、こういう人気の展覧会は会期
の後半になると、なかなか入れなくなってしまうので早くいかな
ければと思っておりました。

今回の展覧会はフランスのニース市のマティス美術館の所蔵作品を
中心に、切り絵に焦点を当てながら焼く150点を紹介するものと
なっておりました。

特に、今回、見ごたえがあったのは、マティスが最晩年に建設に
取り組んだ、ヴァンスのロザリオ礼拝堂に着目し、建築から室内
装飾、祭服に至るまでマティスの芸術世界を紹介するものとなって
おります。会場内に、そのロザリオ礼拝堂の写しを作り、あたかも
現地にいるような気持ちにさせてもらいました。

会場では、現場の教会の鐘の音やミサの音楽なども静かに流れて
おり、臨場感あふれる展示となっておりました。

私が美術商になって30年の間に日本の美術館の企画力や交渉力は
大きく変化したと実感しています。30年まえは、日本はアジアの
辺境の地であり、お金はあったとしても内容の良いものは欧米の
美術館から貸し出されることは、なかなか難しかったのだと思います。

しかし、現代になり経済的には厳しくなった日本に対し内容の充実
した美術品が来るようになり、日本にいながらにしてレベルの高い
作品を拝見できるようになっています。

それというのも、日本の学芸員の方々の努力と、そのレベルの高い
交渉力と企画力によって、現地の学芸員の方も日本の文化度の高さ
を認めてくれるようになったのだと思っています。
1980年代はまだまだ日本はエコノミックアニマルと言われて
おりました。経済的には世界の中で沈み始めていると言われており
ますが、日本の文化度の高さは、かつての経済大国だった日本と比
べて、さらに評価は高まり、文化大国として世界に発信していく時期
がやっときはじめているのだと感じています。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年03月02日

「福永明子展2024〜ひのもと〜」

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       今の美術業界を考える(その1020)

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福永明子展2024            2024年3月2日
〜 ひのもと 〜
        銀座柳画廊 2024年3月10日まで
                     
銀座柳画廊で4回目となる福永明子展を開催しています。サブ
タイトルは 〜ひのもと〜 。福永先生はスピリチュアル系の方で
すので、人やネットなどから情報を取るというよりも、自分の感性
で感じることをとても重視されています。

純粋に日本に生まれて、育ててくれた日本の事が大好きだとおっ
しゃる福永先生にとって、今回、初めて描かれた富士山は、今まで
畏れ多くて描けないと思っていたのを、今回の展覧会では「描かな
ければ」と思ったようです。

作家にとって、個展というものは何年かに一度、自分の成長を含め
て、日々の精進と考えていることを発表する場所でもあります。
それは孤独な作業でありますが、多くの方に見ていただくことで、
その孤独の作業の結果を感じる機会となります。

前回の展覧会はコロナ過で開催され、それから世界はロシアの戦争、
中国の覇権の脅威、そしてパレスチナとイスラエルの戦争など、
私達の周りでは心が不安定になる要素でいっぱいです。

今回〜ひのもと〜というサブタイトルをつけ、富士山を描こうと思っ
た福永先生の気持ちはそれらの一連の当然の流れであったのだと感じて
います。今、世界で求められるのは、‘和をもって尊しとする’日本
の精神性であると福永先生は感じておられ、私もそれに共感しています。

その思いを日本画という形で表現され、今回の展覧会にぶつけてきて
くれたことに、銀座柳画廊としては応えていきたいと思っています。
私も最近、海外に出ることが多くなってきている中で、感じることは
海外にいると緊張しているという事です。言葉の問題ももちろん、あ
りますが、人に騙されないか、すりにあわないか、危険な目に合わない
か、などなどそこには危険が一杯だからです。
日本にいるときに感じる、安心感と食事のおいしさ、人の優しさは
お金では表現できないものであり、その価値に気づいた外国人が
円安で安いからだけではなく、日本のファンになっているのだと
思っています。

今回の展覧会は福永先生の今の心境が伝わるものとなっています。一人
でも多くの方にご高覧いただきたく、宜しくお願いいたします。



                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年02月24日

「Seed 山種美術館 日本画アワード2024」

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       今の美術業界を考える(その1019)

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Seed 山種美術館 日本画アワード2024  2024年2月24日
   山種美術館  2024年3月3日まで
                     
山種美術館で開催している日本画アワードを拝見してまいりました。
この公募展は日本画の奨励・普及活動の一環として、1971年
より開催されているということです。

山種美術館の館長が、大学の先輩というご縁もあり直接お声かけを
頂きましたので、直ぐに行ってまいりました。関連イベントとして
アーティストトークもあるということで、午後2時からのご案内を
頂きました。残念ながらその時間帯は伺うことができなかったの
ですが、幸いその前の11時から開催されているアーティストトー
クに途中から参加することができました。

普段、画廊を経営しておりますから絵を見ることは慣れております。
それでも作家の思いを直接伺うことはとても大切です。山田雅哉さん
という作家さんがとても素晴らしいことをおっしゃっておりましたので
ご紹介いたします。
‘僕は日本画の可能性を信じています。日本人として生まれ、日本画
は日本の精神性を表すものとして最適な表現方法だと思っています。
日本画を描くときは顔料と膠と紙と筆で描いています。その時に僕は
日本画は全て自然界にあるもので絵を描いているという事を意識して
います。すべてのものに神様がいるという考え方は日本画の世界の中
に今でも生きていると思っています。‘

確か、こんな感じのトークをたんたんとまだお若いのにお話されていた
のがとても印象的でした。

銀座柳画廊は油絵の作家を中心に扱っている画廊ですが、今の時代は
油絵とか、日本画とか、インスタレーションとか、ミックスドメディア
やメディアアートなど、さまざまな表現方法があり、大切なことは、
その絵画に込められた精神性だと私は思っています。

海外からのお客様が増えた銀座では日本画に興味を持たれる方が多く
いらっしゃることを肌で感じています。また、日本画の作家は日本にいな
がらにして、日本人であることを意識されている方が多くいらっしゃいます。

改めて私自身も、山種美術館とのご縁を頂いたことから、日本画についても
展覧会をはじめとして知識と経験を深めようと思いました。山種美術館での
公募展では、非常に高いレベルの作品が並んでおり、ここから将来の巨匠が
生まれてくるのだと思うと、画商としてはまた3年後、この展覧会には来な
ければいけないと思いました。

美術ファンには、これからの作家を見つける登竜門になると思います。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
 


2024年02月17日

「ドガの想い出」

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       今の美術業界を考える(その1018)

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ドガの想い出             2024年2月17日
  J.フェブル、A.ヴォラール著  東珠樹 訳  美術公論社
                     
昭和59年に出版されたこの本を、倉庫から引っ張り出して拝読
いたしました。この本は画家ドガの姪であるJ.フェブルと画商の
ヴォラールがそれぞれに書き下ろしたものを、訳者の東珠樹氏が
翻訳して1冊にまとめたものです。

ドガの人となりを直接、そばで支えた2人による記録はより深く
ドガの作品だけでなく、その人やその作品が出来上がる背景を
理解するのに重要なものでありました。とくにJ.フェブルは
独身のドガの晩年の健康を管理するという重要なお役目を果たされ
ており、もともと貴族出身であるドガの良い理解者だったのだと
思います。ドガは、ド・ガス家のフランス貴族の出身であり、
ドガの祖父の時代にフランス革命があり、激動の時代を生き抜いた
ようです。

ともあれ、祖父の代の働きにより、経済的には恵まれたドガは、
それでも画家という仕事を父親に理解してもらうまでは経済的な
苦労も経験し、その時に眼を痛めていると回想されています。
この書物から、私はしったのですがドガは眼が悪く、晩年の10
 年ほどは、ほとんど眼が見えていなかったようです。

 眼が殆ど見えないということから、手で形を作るということで彫刻
 という仕事にも力をいれています。オルセー美術館にも多く収蔵
 されているドガの踊り子たちのブロンズは、そういった背景から制作
 されたものだと知りました。

 また、ヴォラールの書いたドガに関する回想録には、画商として
 ドガの生活を支えていたエピソードなどが多く書かれておりました。
 まず、ドガが結婚しないという選択を選んだことにも、ヴォラール
 の考察によると、ドガの芸術家に対する考え方が、芸術家という
 ものは、束縛も、習慣も、義務も持つものではなく、ただ、常に魂の
 安らぎだけを持つものである、と考える人だからとのことです。

 ともあれ、二人のドガに関する文章を拝読しても、やはりドガは
 一般的には人づきあいは苦手なほうで、一人でいることを好み、
芸術が最も大切な友人であったことは事実のようです。

 当時のゴッホもそうですが、私達日本人が抱いている芸術家のイメージ
 の代表格のような方がドガという人物であり、彼が生み出した芸術が、
 多くの芸術家に影響を与え続けていることは確かなのだと思います。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年02月10日

「印象派」

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       今の美術業界を考える(その1017)

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印象派                2024年2月10日
                東京都美術館 4月7日まで
       
 ボストンのウスター美術館の所蔵作品が中心の‘印象派’の展覧会
 を上野の東京都美術館で拝見してまいりました。このブログでは
 美術展のことを書くのが喜ばれるようですので、平日の朝の仕事
 時間中ですが社長にもお許しを頂いて、拝見してまいりました。
 書くことが多くあるときはダブるために、昨年、SOMPO Museumで
 拝観したゴッホ展などはコラムにしておりませんが、会期が終わっ
てしまっているので、書くのをためらっています。

 話がそれました。今回の印象派という内容の展覧会ですが、内容
 としては、アメリカのボストンにある美術館からの貸し出しです
 ので、フランスで起こった印象派という活動がどのようにして、
 アメリカに伝搬したのか、その時代背景も含めて紹介する内容と
 なっておりました。

 私の考察では美術の歴史というのは、ある意味では権力者の歴史で
 あって、美術史というもの自体が世界の権力構造を知る上で大きな
 意味があると思っています。そういう意味で、印象派という時代は
 世界の権力がヨーロッパからアメリカに移る時の芸術という作品
 を通して、歴史的な権力の移動を確認するものだと感じました。

 当時のアメリカ人にとって旅行というものはヨーロッパにいくこと
 だったそうです。パリのデュラン・リュエル画廊が印象派を
 新興国のアメリカに紹介することで、富を得るとニューヨークにも
 その支店をだし、アメリカにヨーロッパ文化を高い価格で普及させて
 いったのだと理解しています。

 そうした中で、世界中の芸術家をエコール・ド・パリという時代に
 パリに集めて、勉強したのちに自国に戻り一人者になるということ
 が行われました。今でもフランスは文化の力を国力と位置付けて
 いる国だと思います。その大きな力の源泉が印象派という芸術活動
 だったことは明らかなのだと感じました。
 今回の印象派の展覧会では、メアリーカサットなどを含む多くのアメ
リカ人の印象派の作品も展示される中に、ウスター美術館の所蔵のもの
ではありませんでしたが、印象派に影響を受けた日本人の作家も併せて
紹介されておりました。

少し気になったのは、全体として会場に対して集めた作品の数が少ない
のかな??? と思いましたが、この展覧会から学ぶことは多く、
経済的に成功された方が地域への社会貢献として美術館を作る流れは
アメリカで盛んにおこなわれている活動で、日本にもその影響を受けた
経済人が出てきていることも喜ばしいことだと思いながら、この展覧会
を拝観させていただきました。

銀座柳画廊にこの展覧会カタログも置いてありますので、ご興味のある
方はカタログを拝見しに画廊にこられるのも歓迎しています。


                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
2024年02月03日

「運命をひらく365の金言」

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       今の美術業界を考える(その1016)

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運命をひらく365の金言        2024年2月3日
                森信三 著   到知出版社
       
没後30年を記念して出版された本ですが、今、画廊で営業職の
採用をしており、苦戦しているところに本屋さんでたまたま手に
とったこの本の、人事の三原則、という所の次の言葉が心に
響きましたので、購入して拝読することにしました。

 人事の三原則
1. 原則として本人の意思に反して転勤させない
2. 去る者は追わず
3. 迎えるときは絶対厳選

ということで、この言葉に従い、なかなか応募がこないからといっ
て安易に採用することはやめることにしました。1の転勤は銀座柳
画廊の場合はありませんので、特にピンときませんでしたが、去る者
は追わず、という言葉は今までに何度も経験してきておりますので
非常に心に響きました。そして、今、採用に苦労しているので、応募
がくると営業職の経験のない、見るからに営業に向いていない方にも
育てたらなんとかなるかな、、、などと思っていた所でしたので、
この考え方は捨てることにいたしました。

私の尊敬する経営者の一人である堀義人さんが、創業間もない頃に、
おっしゃっていたのが「僕の大切な仕事は採用なんだよ。だって、
優秀な人を採用したら、放っておいても自分で仕事を作って、会社に
利益をもたらしてくれるもの。」という言葉を思い出しました。

やはり画廊という難しい仕事のなかで、最も大切な営業という仕事を
任せるためには、人が好き、営業が好き、絵を売るのが楽しいという
人でないと、続かないと改めて思いました。

画廊の仕事というと、絵が好きな方の応募が多く来ます。その多くは、
受付や事務作業をイメージされていて、最も大切な絵を売るという視点
を持たない方の応募が多くいらっしゃいます。実際に、銀座柳画廊でも
営業は社長と男性営業マンが一人いるだけで、今後の事を考えると、
営業職の方を入れていかなければ続かないと切実に感じています。

森信三さんという、明治生まれの「国民教育の師父」と言われた方の
言う通り、時間がかかっても厳選しようと思っています。


                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075

2024年01月27日

「ゼロからわかる江戸絵画 」

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       今の美術業界を考える(その1015)

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ゼロからわかる江戸絵画        2024年1月27日
                  京都 福田美術館 終了
       
 コロナ時代に読書会で知り合いました、同い年の友人が会社を
 退職された後に京都に移り住み、趣味で福田美術館のお手伝いを
 されていらっしゃるとのことでしたので拝見してまいりました。 

 この美術館のコンセプトは、古来より多くの貴族や文化人に愛され
 芸術家たちが優れた美術品を生み出す源泉となった京都・嵐山。
 今は日本だけでなく、世界中からの人が訪れる観光地として知られる
 ようになり、美しい自然とともに日本美術の名品を楽しんでもらう
 ことで、嵐山が世界有数の文化発信地となることを願う、とあります。

 そのコンセプト通り、平日の昼間にお伺いしたにも関わらず多くの
 外国人観光客にあふれていて驚きました。その旨を友人に伝えると
 これでもまだ、紅葉が終わった時期なので落ち着いている方だとの
 ことでした。京都の観光地としての底力に心底、驚きました。

 作品に関して言えば、江戸絵画とあるように、若冲、北斎、そして
 最近注目している長沢芦雪の名品が並んでおりました。期待以上の
 内容であるとともに、最後には現代作家である品川亮さんの作品も
 楽しめる趣向となっておりました。

 まさしく江戸時代というものは、徳川幕府が戦争のない世の中を作っ
 たことで、日本の文化が花開いた時代でもありました。その時に、
 政治は江戸に移りましたが、文化の中心は引き続き京都にある時代
でもありました。くだらないという言葉は良いものは江戸にはいか
ないという意味で、使われました。

 狩野派や琳派といった絵師が京都で切磋琢磨している時代でもあり、
 多くの才能が生まれた良き時代だったのだと思います。さらに鎖国
 という事もあり、日本が独自の文化を追及していた時代ですから、
 そのころに醸成された日本文化がのちの時代である明治になって世界
 に日本が国を開いた時にはジャポニズムという形で世界を席巻する
 ようになったのだと思います。
 よく日本の近代は西洋のものまねだという日本人までもいらっしゃい
 ますが、そんなことは決してなく、日本人のDNAにはこの長く続いた
 鎖国のおかげで多くの文化的な遺伝子が私たち日本人の中に染み込んで
 いると感じています。

 この福田美術館のコンセプトにもある通り、京都の嵐山という場所で
 日本絵画を拝見することに意味があり、そこから私たちは新しい文化を
 育んでいることを理解して、これからの日本の美術について考えるのが
 正統な手法なのだと思っています。

                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
 


2024年01月20日

「マークロスコ展」

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       今の美術業界を考える(その1014)

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マークロスコ展            2024年1月20日
                   ルイヴィトン財団美術館

パリでマークロスコ展を拝見してまいりました。日本に帰国する
その当日に、少し時間がありましたのでパリの友人に伺うと、絶対
に見るべきはポンピドゥーセンターのピカソのデッサン展、そして
二コラドスタール展、マークロスコ展ということでした。

しかし、ポンピドゥー美術館はこれから始まる改築による休館を
反対する従業員によるストライキが実施されており、残念ながら
拝見することができませんでした。また、銀座柳画廊で扱っている
岡野博先生が最も尊敬するニコラドスタールの展覧会を是非にと
思いましたが、事前予約の枠が展覧会の終了日まで全て埋まってお
り、パリ市立美術館まで伺いましたが、全く入ることは不可能でし
た。

そんな中で、ネットの予約サイトでマークロスコ展を検索すると
購入することができたので、これは拝見できると喜び勇んで伺いま
した。日本でマークロスコと言えば川村記念美術館で7点を展示し
ているロスコの部屋が有名で、また軽井沢のセゾン現代美術館にも
常設で素晴らしいロスコーの大作を展示しています。

ルイヴィトン財団美術館は昨年のお正月にパリに伺った時にはモネ展
を開催しており、さすがお金を持っているだけあって、世界中の美術
ファンを熱狂させるだけの企画展を開催できる財力があるのだと心か
ら感激いたしました。

私の個人的な考察ですが美術には魔力的な魅力があり、どんなお金
持ちが投資しても足りないと思わせる程のコンテンツがあり、また
お金がなくても、どんなに貧乏をしても離れられない多くの人が存在
しています。その人たちが肩書や社会的な地位に関係なく、同じ作家
が好きであるというだけで、不思議な連帯感と友情が生まれるのも
美術の魅力だと思っています。

芸術大国のフランスだけあって、内容のクオリティの高いものに人が
集まり、レベルの高い美術展が多く拝見できるのがパリの最大の魅力の
ひとつだと思っています。この展覧会はマークロスコの若い頃の具象絵画
を描いていた時代から晩年の昨年までを一望できるものであり、見ごたえ
のある展覧会であったことは言うまでもありません。
     
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2024年01月13日

「正義と腐敗と文科の時代」

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       今の美術業界を考える(その1013)

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正義と腐敗と文科の時代        2024年1月13日
                  渡部昇一 著  青志社
         
ここ最近、この方の著書に出会い、渡部昇一さんの本を色々と
拝読しています。その中で、この本は著書のお嬢様の早藤眞子さん
が前書きを書かれているということもあり、お正月に拝読させて
いただきました。

コメントにも‘すべての人が面白がる話題はただ一つ、人間である’
という言葉が、著書が鬼籍に入られている今でも現代に生きる私達
に重要なメッセージだと思っています。生成AIやロボットが活躍する
今だからこそ、あらためて人間は人間に興味を持つことを実感して
います。

この本の内容は非常にこく、この1回のコラムでは書き尽くせない
程の内容ですが、その中で特に私が感銘した2つの内容について
お伝えいたします。

一つ目は日本の国体についてです。日本の国とはなんぞやといった
時に、明確に短く伝えることが難しく感じておりましたが、著書が
おっしゃるとおり、日本の天皇を中心として、日本におられる神様
を日本人の代表として天皇家が祀っている国であり、1000年以上
も前に、それでありながら仏教伝来を受け入れ、天皇家が仏教を
推進してきた国であります。さらに、源氏の時代にあっても、日本は
次の権力をもった人物が天皇を御旗に政治を行い、第二次世界大戦
の敗戦を経験しても、日本の天皇家を潰さずに存続させていること
です。国体としての大きな変化はあっても、天皇家を残すことで、
国体が破壊されることなく、現在も大きな求心力を持っていると思っ
ています。

二つ目は日本の英語教育についてです。この方ご自身が上智大学の
英語科の教授であり、日本人は10年以上も英語教育を受けている
にもかかわらず、英語がしゃべれないという批判について、鋭い考察
を述べています。渡辺昇一さんがおっしゃるのは、日本における
英語教育は、語学取得の考え方は仏教伝来の中国語の取得から始まっ
ていて、外国の高度な文化を正確に理解することを目的とした学問で
あり、喋ることやコミュニケーションをとることに重きを置いてい
ないとのことです。もっというと、英語の文法や考え方を学ぶことで
難しい言語である日本語の理解を深め、若い頃に日本語というものの
理解を深めることで、全ての学問に通じる日本語を学んでいるのだと
いうことです。

確かに、そう考えると私達のならった英語教育は国語でもあると思う
と至極納得できます。日本における英語教育は、その国の最も
ハイレベルな文化を取得するための語学の取得方法なのだと考えれば
日本の語学教育のレベルの高さに驚かされます。
 
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
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