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今の美術業界を考える(その324)
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札幌出張報告 2010年5月22日
今年で札幌市立大学の授業も3回目になります。昨年度は卒業生もだし、
就職もわりと良かったというお話を聞いて嬉しく思っています。
最近の大学では、非常勤講師として社会の現場で働いている人の声を
直接学生達に届けたいという思いがあるらしく、私のような人間に
声をかけてくれるようになったようです。
先週号にも書きましたが、今年は日本の美術教育に力を入れているという
ことで、札幌市立大学の授業でも、内容に色々と変更を加えています。
まず、昨年までは学生からの発表としての課題は、「海外で展覧会を
するときの準備」でしたが、今年は「札幌にある屋外彫刻を捜してきて、
鑑賞し、その楽しみ方を紹介してください。」ということで、まさしく
画廊めぐりの発展系の課題を出してみました。札幌には、私も驚きました
が、数多くの野外彫刻があり、札幌の駅前どおりは彫刻どおりとまで
言われているようです。生徒達に、イサム・ノグチの彫刻から
佐藤忠良の彫刻まで数多くの素晴らしい作品を紹介してもらい、その
鑑賞の仕方や楽しみ方も若者らしい発想で非常に楽しいプレゼンテーション
をしてもらいました。美術の仕事を長年していると、ふと気づくと自分が
凝り固まった考え方をしていないか? 自由に美術品を楽しんでいない
のではないかという恐怖にかられることがありますが、学生や子供たち
から学ぶことは多く、彼らとの交流は美術品に対して謙虚な気持ちを
思い起こさせてもらえます。とはいえ、間違った情報は修正しなければ
いけないので、作家名を取り違えて覚えたり、緊張して違う作品の説明を
することに対しては、訂正してもらっています。しかし、美術教育の
基本は、正しい知識や、技術を学ぶことよりも、美術を楽しむ心を教える
ことが一番重要だと思っておりますので、そこの部分に一番気を使っています。
今回、少し時間があったので芸術の森でやっていた「片岡珠子展」と近代
美術館でやっていた「本願寺展」もあわせて見てきました。驚いたのは
TVや新聞で宣伝しているとはいえ、平日の昼に真駒内からバスで20分
もかかる芸術の森に、バスを1台見送らなければならない程の人が展覧会
を見に行くということでした。本願寺展においても、チケットを購入するのに
20人くらい並んでいて、会場内は人の頭の上から作品を覗き込む有様でした。
私が確信したのは、これから数年の間に必ず日本は文化・芸術が重要な政治
課題にあがる国になるということです。高齢化が急速にすすみ、団塊の世代が
大量に仕事を辞めて、時間ができたら何をするかといえば、豊な
気持ちになれる、美術館やお芝居や音楽など文化的な行動をとるに違いないと
思っています。多くの人は、高齢化の問題は医療費の増加といいますが、心の
病気を治して健康にしてくれるのが文化だと思います。これからの日本は
医療と同じように、文化を大切にしなければならず、医療技術が進んだために
人は簡単には死ねなくなっています。治療と治療費が辛くて自殺する方も
急増しているとも伺っています。心を健康にするために文化の力を必要とする
時代がすぐそこまで来ていると実感しています。
文責 野呂 洋子
